忘れていたものは、返せた。
あっという間に卒業式から、3日ほど経った。
今日は、卒部式や、同級生の寮生(卒業式後もまだしばらく寮に居るらしい)に会いに学校に行った。
それと一緒に、2日のブログに書いた本、
『宇宙からの帰還』立花隆著
を返しに行こうと考えていた。貸してくれた先生はまだ若い女性の先生だ。
朝、教科の研究室に行った。そしたら、その先生はおらず他の先生がいた。そこにいた先生に、
「ーーちゃんは来ますか?」(その先生のことはちゃん付けで呼んでいる。もちろん、親しみと尊敬を込めて。)
と聞くと
「今日は、忙しくてしばらく、ここには来ないよ。」
と言われた。
机の上に置いておくのも違う気がして、直接手渡したくて、ポッケに本を入れて一旦別の用事を済ませることにした。
お昼、食堂でレモンサイダーを買って出たら、ちょうどその先生が食堂に向かって歩いていた。声をかけて、本を手渡した。
「本、ありがとうございました。」
借りたのは僕なのに、先生は、僕が学校に来ていたことに驚いたように
「わざわざありがとう」
と言い
「卒業後はどうするの?」
と続けた。
「農業を勉強します」
「学校関係で、知り合いに農家さんがいるから、紹介して欲しくなったら連絡してね。」
「ありがとうございます。」
僕は、いつも通り鈍く言った。
僕は、四年間、本を借りっぱなしだった上に、完読しなかったことに引け目を感じていた。
でもそんな風に僕のことを気にかけてくれて嬉しかった。
本を返せてよかった。
(ちなみに借りていたのはこの本)